地球の日
あったかい夕暮れ。
今日の最高気温は、今年で二度目の真夏日だったらしい。
目当ての小説の新刊を買い、新一は駅前の本屋から出てくる。
「ん?」
「あ。新一おにいさん」
「歩美ちゃん?」
ふと、気が付くとそこには小さな影。
コナンの時にいつも行動を共にしていた、小さな仲間のひとりの吉田歩美がいた。
少し髪の毛が伸びたんだな。
あれから二年も経ったから、背も伸びたみたいだ。
『工藤新一』に戻って『江戸川コナン』が消えた。
コナンは外国にいる両親と、今は向こうに住んでいる事になっている。
今ではあまり会うことはなくなっていたが︙︙
会ってしまったら、無視出来るわけがない。
「どうしたの? ひとり?」
「︙︙うん。ねえ新一おにいさん、さっき私に会わなかった?」
「いま会ってるじゃないか」
「違うの。さっきね、公園でお母さん待ってる時、ジャングルジムでお空見てたら隣に新一おにいさんが来て︙︙」
「ええ?」
何を、言ってるんだろう歩美は。
新一はしゃがみこんで、話をずっと聞いている。
「久しぶりだね、元気? って。これ、くれたの」
「︙︙ちっちゃい地球儀だ」
「うん。今日はね、地球の日だからねって。笑った顔が、ほんとにおにいさんと同じだったんだよ?」
「そいつ、どこ行ったの?」
「わからない。気が付いたらいなくなってたの」
「そうか︙︙」
ちいさな地球儀。
新一のてのひらにすっぽり納まる、ちいさなちいさな碧の地球・・・
「俺に似てたんだ」
「︙︙コナンくんにも似てたの。だから、すっごいどきどきしちゃった」
「そ、そう」
「コナンくん元気かなあ︙︙」
その時、本屋の隣の店から歩美の母親が出てきた。
新一に気付き軽く会釈をすると、二人は手をつないで向こう側へと消えてゆく。
︙︙新一は、しばらくその後姿を見ていた。
「地球の日、ね」
地球はみどり。みどりの地球。
そしてみどりの日は、今日のこと︙︙
歩美が会ったのはきっとあいつだ。
俺の顔をした、あいつ。
歩美は以前、あいつに会ったって言ってたから︙︙
新一は夕陽を見つめる。
大きな大きな、太陽が見える。
地球の日にふさわしく、今日はとてもいい天気。
お前も今、やっぱりこの夕陽を見ているのか︙︙?
[了]
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